相手の負担を減らすコミュニケーション
こんにちは。Gaji-Labo でフロントエンドエンジニアをしている thkt です。
Gaji-Labo は、クライアントのプロダクトチームに参画し、チームの一員としての開発を仕事としています。そのため、日々のチャットコミュニケーションでは、そのチームメンバーに対して相談や連絡をする場面が多くあります。
そんなとき、皆さんはどんな言葉を選ぶでしょうか?
私は「〜はどうですか?」とか「〜でいかがでしょうか?」というふうに丁寧に結ぶことが良いだろうと思い、そうしてきました。
しかし先日、チームメンバーへの確認依頼について他の Gaji-Labo メンバーからフィードバックをもらい、こうした結び方が状況によっては相手に負担を発生させてしまっていることに気づきました。
今回は、そのフィードバックをきっかけに気づいた「承認待ちの構造」の問題と、それを解決するためのコミュニケーションパターン、そしてレビューを仕組み化した方法について紹介したいと思います。
ブロッキングを発生させるコミュニケーション
フィードバックをもらったのは、私が参加しているプロジェクトにおいて、プロダクトオーナーに進められるタスクの提案と確認の仕方を相談した時でした。
実際のテキストとは異なりますが、次のような確認文言を作成し、レビューを依頼しました。
改めてタスク整理したのですが、バックエンド対応完了まで手が空きそうです。
別の新機能開発が控えてましたので、手戻りがある前提ですが、
仕様書から issue 化しての進行を検討していたのですが、
こちらいかがでしょうか?これに対していただいたフィードバックが、次のようなものでした。
> こちらいかがでしょうか?
この返事がないと動かない状況をつくるので、強制的に相手に負担発生させますね。これには目から鱗でした。
もちろん、問題は「いかがでしょうか?」という言葉そのものではなく、その背景にある「返事がないと動かない状況をつくる」構造にあります。
Gaji-Labo は「チームの一員として自律的な振る舞い」をしてプロダクト開発支援を行っています。私のコミュニケーションの仕方は、それと矛盾していることに気づきました。
無意識のうちに、ブロッキングを発生させるコミュニケーションをしてしまっていたのです。
なぜブロッキングを発生させてはいけないのか
過去のブログ記事にもありますが、Gaji-Labo は「忙しい意思決定者のサポート」できるよう努めていこうとしています。
しかし、私が作成した文章を改めて見てみると、意思決定者のサポートどころか、負担を増やすものになっていました。
宙に浮いたボールを拾うところまではよかったかもしれませんが、そのボールの行く末を意思決定者に丸投げしてしまっている状態です。
こうした承認待ちのコミュニケーションが積み重なると、意思決定者に「判断しなければいけない」というストレスとタスクを増やし続けることになります。特にリモートワークが中心の環境では、テキストコミュニケーションでの待ち時間が仕事の進行を大きく左右します。
繰り返しになりますが、「いかがでしょうか?」という言葉自体が悪いわけではありません。問題の本質は、自律的に判断できることまで相手に投げてしまうことにあるのです。
ブロッキングしない構造とは?
では、どのようなコミュニケーションを心がけるのが良いのでしょうか。
答えとしては「自分で判断して、懸念があればストップできる余地を残す」ことです。
まず、先ほどのテキストです。
改めてタスク整理したのですが、バックエンド対応完了まで手が空きそうです。
別の新機能開発が控えてましたので、手戻りがある前提ですが、
仕様書から issue 化しての進行を検討していたのですが、
こちらいかがでしょうか?これに、進行をブロッキングしない主体性と負担を減らす構造を加えてみます。
改めてタスク整理したのですが、バックエンド対応完了まで手が空きそうです。
別の新機能開発が控えてましたので、手戻りがある前提ですが、
仕様書から先行で着手できそうな部分を進めておこうかと考えています。
他にもこの機会に取り組めることがないか検討してみます。
他に優先した方が良いことやご懸念などあればお手すきでご指摘ください。構造としては、次のようになります。これだけでコミュニケーションの質を変えられることに気づきました。
- 状況説明
- 自己判断と計画
- 検討事項の共有
- 懸念があればストップできる余地
もちろん、重要なのは小手先で言葉の使い方を変えることではありません。自分で判断する姿勢を持つこと、そしてそれを相手が理解できる形で伝えることにあります。
ただし、すべてを自律的に判断すればいいというわけではなく、自分の専門領域で判断できることと、相手の判断が必要なことの境界線を見極めることにあると考えています。
レビューの仕組み化
気づきを得て構造を理解するまではいいのですが、それだけで以後のコミュニケーションを全く別物にできるわけではありません。
機械のように矯正したくとも、クセのように無意識で改める前のやり方を繰り返してしまうことがあります。
そのため、ブロッキングするようなコミュニケーションをしていないか、チェックする仕組みが必要だと考えました
business-communication-review スキルの作成
そこで作ったのが、AI チャットツール Claude Desktop で使用する business-communication-review スキルです。
これを使用して、特に重要だと思うメッセージをは、送信前にチェックするようにしました。
このスキルは、次のようなことをしてくれます。
- 承認待ちパターンの検出
- 「〜いかがでしょうか?」
- 「〜してもよろしいでしょうか?」
- 「ご確認ください」に続く行動依存
- 相手の判断を強制する構造
- 自律的パターンへの変換
- 「〜を進めようと考えています」+ オプトアウトの余地
- 判断理由の明確化
- 時間的配慮の表現(「お手すきで」など)
- 具体的な書き換え案の提示
- 問題を指摘するだけでなく、どう変えればいいか具体的な代替案の出力

文章を入力して「レビューして」と依頼するだけで、ブラッシュアップしてくれる仕組みを作成しました。
使い始めてからの変化
こちらのレビューツールを使用し始めてから、「本当にこのコミュニケーションの仕方で良いのか?」というのを今までよりも考えて、自分でチェックできるようになりました。
短いやり取りの中でも活かせる場面が多いことも気づきでした。
今は個人で活用してブラッシュアップをしていますが、ゆくゆくはチームに共有していきたいと考えています。
個人の気づきをチーム全体の習慣に変えていく。そのための一歩として使っていけたら良いなと考えています。
自律性とストレスフリーなコミュニケーション
もちろん、ツールとレビューの仕組み化で完璧なコミュニケーションができるようになったわけではありません。
しかし、立ち止まって「負担を増やすようなコミュニケーションになっていないか?」「そんなつもりがなくても、自律性がないように見える言い方になっていないか?」と考えられるようになりました。
再三繰り返しますが、大切なのは言葉遣いではなく、コミュニケーションの構造です。
相手をブロックしない。不要なストレスを与えない。プロフェッショナルとして、自律的に判断する。そして、本当に必要なときには、きちんと判断を仰ぐ。
プロダクトチームとして開発支援を行うために、これからも意識を磨いていきたいと思います。
Gaji-Labo は フロントエンドのAI開発の実績と知見があります
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