『デザインの伝え方』に学ぶ、思考の言語化の重要性
こんにちは UI デザイナーの伊藤です。
Gaji-Labo に入社し、業務を進めていく中で、気づいたことがあります。
それは、今までのテキストコミュニケーションでは、読み手の解釈に頼ることで成り立っていた点が多かった、ということです。
仕事をする上で相手に物事を適切に伝えることは重要だと日々実感しています。
フルリモートで働くなら、なおさらです。
私の場合は特にデザインについて、相手に負担をかけず正しく情報を伝えるためにはどうすればいいのか学ぶ必要があると感じました。
そんな折、社内で薦めていただいた、オライリー・ジャパンの『デザインの伝え方』を読みました。
本書ではプロダクト制作における意思決定者との会議に焦点を当て、全員から合意を得るための準備、当日のコミュニケーション、会議後の振る舞いなど、幅広い時間軸での対応が書かれています。
状況に応じた対応方法が多くの事例を交えて書かれているので、一度にすべてを実践することはできなくても、段階的に参考にしやすい内容だと感じました。
今回はこの本の中から、デザインを伝えるための準備段階に着目してまとめていきたいと思います。
自分のデザインを理解・把握すること
『デザインの伝え方』を読んでいて、伝えるための準備に多くの時間を割いていることが印象的でした。
準備の内容も関係者との関係性の構築や、適切な資料の用意、会議のリハーサルなど多岐にわたって書かれていますが、今回はデザインに関する普段のやり取りでも重要な「 自分のデザインを理解・把握すること」について考えてみます。
伝えるためには、まずデザイナー自身がそのデザインの文脈を深く理解していることが大前提です。
自身のデザインを説明するためには、次の問いにいつでも答えられる状態にしておく必要がある、と本書は説いています。
- このデザインはどのような問題を解決できるのか?
- このデザインがユーザーにもたらす影響は?
- このデザインが代替案より優れている理由は?
こう列挙されると当たり前に聞こえるかもしれません。
しかし、これらの問いに常に高い解像度で答えられるかと問われると、私自身はやや心許なく感じます。それは次の文章を読んだときに自身の思考を振り返ったことが理由です。
あなたがボタンやチェックボックスなどアプリの UI 要素をデザインし始める場面を思い浮かべてみましょう。そうした要素のデザイン上の決断を下す時には、逐一その内容と理由を意識的に検討する必要があります。「こうすることで、自分はどんな問題を解決しようとしているのか?」と絶えず自問しなければなりません。
Tom Greever 著、坂田一倫 監訳、武舎 広幸、武舎 るみ 訳.デザインの伝え方.オライリージャパン ,2016,3章 序文より引用.
意図を持って要素の検討を行なっていたつもりでも、絶えず自問できているのでしょうか?無意識に選択をしていることもあるのでは?と自身の思考プロセスを見つめ直すきっかけになりました。
たとえ無意識の選択だったとしても、これまでの経験に基づいているため、「なぜ?」と自問すれば答えられるかもしれません。しかし、その意図を事前に言語化できていないのであれば、それはまだ十分に検討し尽くされていない、ということでもあるのです。
自身の決定の意図を把握できていないことは正しく伝えるための情報が不足していると言えると考えます。
自身の決定意図を明確に把握するためにはどのような行動をしたらいいのか。
本書にはその方法も記載がありました。
書き留めることで「無意識」を「意識化する」
本書では意識化するには自身の意思決定や決断に至る思考過程を常に書き留めることが最良だと説いています。
書き出すためには、まず自分の思考を意識する必要があります。つまり、デザイン作業中の思考を常に書き出す習慣をつければ、自ずと自分の思考を意識できるようになる、ということです。
ふと、これは自身を実況することに近いなと感じました。
弊社では、自身の作業内容や思考を Slack で共有する「実況」を推奨しています。
フルリモートなのでチームに自身の状態や課題を伝えることで協業しやすい状態を作る上で重要です。また、今回のように、自身の認識や思考を意識し、整理していく上でも必要だとと改めて感じました。
私もここ数ヶ月、デザインする上で情報を整理する過程や、その成果を Slack 上で流すようにしています。その結果やることが整理されるので、着手する上で迷うことが入社当初より減ってきたと感じています。
しかし本書で述べられているような意思決定全てを書き留めるところまで詳細な実況はできていないので、今後は制作過程の実況を取り入れることで自身の意識がどのように変わるかを体感してみたいと思っています。
終わりに
今回は『デザインの伝え方』からデザインを伝えるために思考を言語化することの重要性について触れました。
意識して自分の思考を書き留めていくことで、自身のデザインに対する認識を明確にすることができます。認識が明確になれば、おのずと説明も明朗になります。
もちろん、文章の表現スキルは別途学ぶ必要があります。しかし、その土台として「何を伝えるか」が明確になっていることこそ、相手の時間や思考の負担を軽くする道筋になると考えています。
最後に、本書を通して印象に残った一節を紹介します。
ステークホルダーとデザイナーの関係に欠けている重要な要素のひとつが「みんな生身の人間だ」という認識です。手をたずさえて仕事を進める相手が、生きた人間であることを忘れてはなりません。そういう関係にしっかりと目を向け、意思の疎通を大切にする必要があるのです。とくに大事なのは、相手を思いやる心と、ていねいな言葉使いや良い結果を生む会話を心がけることです。
Tom Greever 著、坂田一倫 監訳、武舎 広幸、武舎 るみ 訳.デザインの伝え方.オライリージャパン ,2016.12章 12.1.4 「デザイナーも人間」との理解をより引用
当たり前のことだと思いつつも、
「適切に書けているか」「不要な要素はないか」といった文章の出来に気を取られて、つい忘れてしまいがちです。
画面の向こうには、私たちと同じように懸命に仕事に向き合っている、生身の人間がいます。さまざま視点の人間が集まっているので、時には意見がすれ違うこともあるでしょう。しかしそれは皆が「良いものを作りたい」と思っているからこそ起こることであり、クライアントと私たちは同じゴールを目指す「同志」です。だからこそただ一方向に発信するだけではなく、相手と「対話」をするというのが何よりも大切なことです。
「対話」を円滑に行い、相手と良い関係を築き、共に良いものを作っていけるようにするために、
言葉選びや気遣いを大切にしていきたいです。
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