お気に入りの書籍紹介『怪談えほん』シリーズ


こんにちは、Gaji-Labo 山岸です。Gaji-Labo Advent Calendar 2014 13日目のエントリになりました。この土日はゆるっと絵本シリーズでお届けしたいと思います。

もともと絵本は好きな方で、大人になってからも図書館などでよく眺めたものですが、手元に置く絵本は多くはありません。今回は手元に置いているものの中から『怪談えほん』シリーズを紹介します。

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いろんな「こわい」があるよ

どの作品も個性派ぞろい

山岸の手元にあるのは、シリーズ第1期の箱入り5冊セット。それぞれ日本を代表する怪談文芸や怪奇幻想文学のプロフェッショナルが執筆を手がけています。それぞれに違うイラストレーターさんをぶつけ、ぞくっとするコラボを見せてくれています。

何より岩崎書店・東雅人さんの企画コンセプトと熱意がすばらしい。

昨今、絵本からは怖い話が消えつつあります。

幼少時代を振り返れば、「怖いけど見たい」「怖かった話を大人になった今でも覚えている」と、怖い話に惹き付けられ、興奮した記憶は誰しもあるところ。ですが、残念なことに、いまその興奮が失われようとしています。

もちろん昔話のような定番は残っています。しかし、もっと新しい作品で、 現代の子どもたちに本格的な怖い物語を届けることができないのでしょうか。幼い頃から書物の世界で、恐怖、怪奇、不条理といったさまざまな怖い思い、不思議な体験を重ねておくことは、長じて後の人生を豊かにしてくれるはず、そのためにも「子どもたちに、もっと怖いお話を」と企画したのが本シリーズです。

どのお話も違う色合いを持っていて、いろんな角度からざわざわが襲ってきます。『ゆうれいのまち』の不安感を煽るゆらぎ、『ちょうつがいきいきい』の正気を削られるやすりのようなひりつき、『マイマイとナイナイ』の後味の悪さ。ことばと絵、どちらが欠けても見せられない世界。絵本の醍醐味です。

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個性派ぞろいの本たち

いるの いないの

中でもお気に入りなのが、京極夏彦氏の『いるの いないの』。

おばあさんの住む、とても古い家で、ぼくはしばらく暮らすことになった。その家の上の方はとても暗い。暗がりに、だれかがいるような気がしてならない。気になって気になってしかたない。京極夏彦と町田尚子が腹の底から「こわい」をひきずりだす。

京極氏のファンは多いのではないかと思います。絵本の中での文字数は普段の作品の1ページ分にも満たないし、漢字がひとつも使われていないのですが、きっちり京極堂な空気を感じさせてくれますよ。

あと特筆すべきは、猫の存在感。本文では猫のことはひとつも出てこないのに、絵にはたくさん猫が出てくる。実はこの本の出版当時、記念トークセッションを聞きに行ったのですが、京極氏もそのことに触れていました。その猫達がまた、怖い世界をこちら側に引き寄せてくれるのです。

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『いるの いないの』表紙

悪い本

子どもがどう思うかはわかりませんが、もう大人の感性しか持っていない山岸がいちばん怖いと思うのは、宮部みゆき氏の『悪い本』でした。何度読んでも、そのたびに怖い。

この世のなかのどこかに存在している悪い本は、あなたにいちばん悪いことをおしえてくれるでしょう。そんな本いらない? でもあなたは悪い本がほしくなります。きっとほしくなります。宮部みゆきと吉田尚令が子どもたちに贈る、この世でいちばん悪い本。

ひとことひとこと、怖い。1シーン1シーンが、怖い。ページを繰るたびに、先回りされながら背中にぴったり冷たい影がついてくるような、黒い怖さ。この本の怖さは、悪い。すごく悪い。大人だからこそ感じる怖さなのかもしれません。宮部氏の作家性が遺憾なく発揮されている作品なのではないでしょうか。

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『悪い本』表紙

シリーズ、もっと増えますように

このシリーズのいちばんおもしろいところは、キャスティングとキュレーション。コンテンツを作る人の素晴らしさもありますが、芯の通った企画に対して魅力的な作家さんと作家さんを相互にぶつけてくる編集さんの仕事が何よりすごい。

普段は媒体としてのウェブを何気なく見ていることが多いですが、こういった仕事を見ると編集という仕事がいかにエキサイティングかわかります。コンテンツ・ファーストという言葉も浸透してきましたが、コンテンツをどう編むのかというのも重要な視点ですよね。

さて、コンテンツを編むのは誰の仕事なのか。ウェブの世界ではあまり明確な答えが出ていない気がしますが、議論は増えているように感じていますし、もっともっと増えて活発になるといいなぁと期待もしています。

増えるといえば、このシリーズも現在第2期の作品が出はじめています。現在は恩田陸氏の『かがみのなか』、岩井志麻子氏の『おんなのしろいあし』という絵本が出ているみたいです。新しいシリーズも怖そうです!

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投稿者 Yamagishi Hitomi

主にサービスデザイン案件や新規事業・スタートアップ案件を担当し、サービスデザイナー/プロセスファシリテーターとしてビジネスとデザインが密接な領域で活動。柔軟なプロセス設計を持ち味にして、チームの成果と成長に貢献しています。社内ではメンバーが健康に働ける環境の整備やひとりひとりの成長のためのしくみづくりなどを担当。おいしいコーヒーを買ってくる担当もやってます☕