AI活用に学ぶ、チーム開発におけるコミュニケーションの原則(前編)


チーム開発を力強く前進させるのは、メンバーの技術力だけでなく、より大切なのは個々を結ぶコミュニケーションです。どんなに強力なスタープレイヤーが在籍していようと、メンバー間の連携が不十分ではチームの出力を存分に引き出すことはできません。

Gaji-Labo は優れたチームワークを価値提供の主軸においています。わたしたちは、どうすればチームの出力を最大化できるかを考え、意識して、実践し、結果に結びつけます。

そんななか、最近チームに AI という新しい要素が加わりました。業務の中では、他のメンバーに対してそうするように、(場面によってはそれ以上に) AI とも密にコミュニケーションを取るようになりました。興味深いのは、AI とのやり取りを通してチーム開発でのコミュニケーションの本質が垣間見えてくるところです。

この記事では、 AI とのコミュニケーションから学ぶことのできるチームコミュニケーションの原則について、考えを巡らせていこうと思います。

AI と人間に共通して大切なこと

AI でも人間でも共通してコミュニケーションにおいて重要なことは、必要な情報の渡し方です。タスクを達成するために必要な情報は、明示的に渡されるか、あるいは作業者から手と目の届くところにあるべきです。

ここでは情報とその渡し方の性質について考えてみたいと思います。

具体性

まずひとつは「具体性」です。例えば AI に曖昧で雑な指示をすると、期待通りの結果を返してくれないことが多いです。人間相手で雑に丸投げしても同じことが起きるでしょう。曖昧な依頼は誤解の元です。

曖昧な指示は、質の低いアウトプットを生みます。正確な出力を得るためには、具体性のある情報を渡してあげる必要があります。「だれが」、「いつ」、「なにを」、「どうするのか」を明確に伝えるのに加え、そこに「なぜ」という背景・経緯の情報をそえてあげることで、より精度の高い結果を得られるでしょう。

場合によっては「どのように」も伝えることがありますが、その How を考えるところも含めて作業者に任せられる状態が望ましいので、できる限り避けたいと考えます。毎度、方法まで指示してしまってはマイクロマネジメントめいた過度な干渉につながりかねません。

Bad : パフォーマンスを改善してください

Good : このURLのレスポンスに時間がかかるので、フロントエンド観点でパフォーマンス改善策を調査してレポートを提出してください

時として、必要な情報が揃っていない雑な指示でも期待通りの結果が得られることもあります。それはなぜかというと、欠けた情報を推論できるだけのコンテキスト(文脈)を持っているからです。

例えば「テストを書いてください」という曖昧な指示だけでは何をしたらよいかは分かりませんが、それがプルリクエストのレビューコメントの中で書かれていたらどうでしょう?プルリクエスト上で実装された機能の自動テストを書くという行動を推論することができます。これが、次に述べる「コンテキスト」の重要性です。

コンテキスト

コンテキストは、その言葉や行動などにひもづいた背景情報を指します。雑な指示でも十分なコンテキストが構築されていれば期待に応えるアウトプットを返すことができます。

AIの場合はコンテキストはプロンプトという形で渡されます。人間の場合、静的なドキュメントやプロジェクトのコードベースにそれらは示されています。口伝情報や自己の経験や記憶といった属人情報もありますが、人間の記憶力の信頼度は決して高くありませんし、頭の中にあったところで他のメンバーはそれを活用できないわけですから、文書という形で言語化されていなければその情報は効果的に働きません。

ひとつ例をあげてみます。

顧客から「このボタンを赤くしたい」という要望があがってきた

ボタンの色を変えるのは非常に簡単なのですぐに完了しますが、一瞬立ち止まって、顧客は本当にボタンの色を変えたいだけなのか、思考を巡らせることにします。この思考を助けるのがコンテキストです。

  • なぜボタンの色を変えたいのか
  • ボタンの色を変えることでどのような効果を期待するのか
  • いままでボタンのデザインについてどのような会話があったか
  • ここでは、どんな「困りごと」を解決したいのか

こういった背景や経緯をあわせて考えると、「ボタンを赤くする」以外のもっと良い解決策が浮かんでくる場合があります。例えば「赤」以外の色にしたり、色ではなくボタンの形状や配置を変更したり、あるいはボタンも関係ない全然違ったアプローチで問題を解決できるかもしれません。コンテキストはコミュニケーションの欠けた情報を補完し、思考を正しい方向へ導いてくれます。

つまり、これらのコンテキスト情報が作業者の手元にあるか、またはメンバー全員の手の届く場所にドキュメントとして整備されていることが理想的です。

前編のまとめ・後編にむけて

この記事では、AIとのコミュニケーションの中から、対人間のコミュニケーションを改善できるアイデアを拾いあげてみました。

前編ではAIと人間とで共通するポイントについて掘ってみましたが、後編では逆に相違点を軸に掘り下げ、チーム開発のコミュニケーションにおける原則というものについて考えていきたいと思います。

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投稿者 Oikawa Hisashi

フロントエンドエンジニア。モダンなJavaScript開発に関心があります。 デザインからバックエンドまで網羅的にこなすマルチデザイナーとして長く活動してきた経験を活かして、これから関わる様々なものをデザインしていきたいです。チームもコミュニケーションもデザインするもの。ライフワークはピアノと水泳。